書評

書評|「幸せをお金で買う」5つの授業

お金の殖やし方について書かれた本は数あれど、お金の(幸せな)使い方について書かれた本は、さほどないんじゃない?

ということで、今日は書評です。

「幸せをお金で買う」5つの授業

2014年発行の本ですが、その内容は時代や国境を超えて普遍的です。

著者はエリザベス・ダンとマイケル・ノートン。エリザベスはブリティッシュコロンビア大学の心理学准教授。マイケルはハーバード・ビジネススクールのマーケティング学の准教授。

つまり、心理学者とマーケティング学者の共著なんですね。

お金の幸せな使い方について、膨大な実験結果をベースに語られています。

概要

タイトルに「5つの授業」とあるように、お金の幸せな使い方について5つの章から説明されています。

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

1.経験を買う

お金を使って幸せになれるのは、プール付きの家、高級車、他社製品よりもスプリングが10%多く配置されている寝心地抜群のマットレスetc…。

よりも、旅行、映画、イベントetc。

ウィスコンシン大学マディソン校のトーマス・デレイア教授達による「支出選択と幸福度の関連」調査では、支出の中で重要な(人生の満足度が上がる)カテゴリーは「レジャー」のみだったそうです。

また、コロラド大学ボルダー校の心理学者リーフ・ヴァン・ボーヴェンは次のように述べています。

物質的な所有物は、段々と背景の一部と化していくように思われるのに対し、経験的な買い物は、時間が経つにつれますます良いものに感じられるようになるのです。

まさに、「想い出はいつも綺麗」ですね。

大富豪が宇宙旅行に多額のお金を支払ってでも行きたがる理由が、わかる気がします。

2.ご褒美にする

たまにお中元等でビールセットを頂くことがあるんですが、美味しいビールも毎日飲んでいるとありがたみが薄れてきます。

これは経済学用語で「限界効用逓減の法則」などと呼ばれたりもしますが、要は「飽きちゃう」ってことなんですよね。

豊富さが感謝の敵であるなら、不足は私たちの最良の友なのかもしれません。

不足することについて、期間限定の威力は抜群。

マクドナルドの期間限定商品戦略についても説明されています。

期間限定といえば、日本には四季折々の旬があります。

イチゴや桃、ホタルイカやセリなど、その時期にしか採れない旬の食材を頂くと幸せを感じやすくなるのは、このご褒美効果なのかもしれません。

また、楽しみの味わい方によって幸福度が大きく変わる研究結果も興味深かったです。

アメリカとフランスのマクドナルドにおける味わい方の比較ですが、アメリカがたくさん食べるのに対し、フランスは料理の味と舌触りを時間をかけてじっくり味わいます(例え、ファーストフードであっても。というのがお国柄ですね)。

結果として、アメリカの「豊富さや大きさ」を重視した食べ方よりも、フランスの「小さな喜び」を重んじた食べ方のほうが満足度が高かったそうです。

3.時間を買う

この章が最も理解できたか自信がない章。

これまでは「お金で時間を買えるなら買ったほうが良い」と考えていましたが、幸福にお金を使うなら「あえて買わないほうが良い場合が多い」ということ。

例えば、ルンバなどの自動掃除機ロボットで掃除の時間を浮かせ、その浮かせた時間で何かすることが良いと考えていました。

しかし、あえて一見無駄に見える、非効率的ともいえる時間を過ごした方が、幸福度が増すケースのほうが多いとのこと。

犬や子供を育てることはコスパが悪い(!)という意見がSNSに流れて驚愕したことが記憶に新しいですが、コスパという考え方は幸福から最も離れた位置にあるのかもしれません。

といっても、郊外に自宅を買って都心に通勤するなどの時間の使い方は、自分及び配偶者の幸福度を大きく下げるようです。

家を買う?その買い物は、次の火曜日のあなたにどのような影響を与えますか?

大きな買い物をする前には、特定の1日における時間の使い方を考えることで、その買い物が私たちの幸福にどのくらい影響を与えるか予測することができます。

何が「無駄」なのか、「無駄ではない」のか、自分の価値基準を明確にしておく必要がありますね。

4.先に支払って、後で消費する

これは端的にいうと、「未来を楽しみにする」ということですね。

いくらか未来が好きになると、幸福度も増します。

旅行、大好きなアーティストの新譜やライブ、続きが気になる次回のドラマetc…

ドラマはいつでも好きな時に楽しめる時代になりましたが、「お預け」消費が幸福に寄与するようです。

面白かったのは、この原則は「お金を最大限に増やす」ことを目的にした場合は当てはまらないこと。

キャッシュフローの観点からは「支払いは先送りにする」ことが正解ですが、より多くの幸福を感じるためには、「支払いは先に済ませる」ことが良いようです。

確かに、誰かに貸し(未払い)がある状態で生活していてもモヤモヤすることが多いですもんね。

5.他人に投資する

誰かのための出費(向社会的出費)は、世代も国境も超え、普遍的に幸福度を向上させるとのこと。

ただお金を稼ぐだけでなく、どのように使うのか、出口まで考えてお金と向き合っていきたいところです。

総評

「幸福度を上げるためのお金の使い方」について、平易な文章で学術的にまとめられている良書です。

「資産を増やすためのお金の使い方」と相反する内容が含まれている点が印象的でした。

お金に関するIQ(知能指数。または知識)よりもEQ(感情指数。または態度)を向上させるための一冊です。

個人的には、資産を増やすよりも幸福度を上げたいので、また読み返したいと考えています。

現在は入手困難

手元に置いて何度も読み返したくなる本でしたが、単行本は高値で取引されています。

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kindleで買って読むか、図書館で借りて読むのがオススメです。

まとめ